2018年8月10日

大激情ドラマの「浮雲」

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成瀬巳喜男を語るうえでどうにもこうにも外せないのは「浮雲」でしょう。
こちらも林芙美子原作の小説を映画化したものです。
まず、原作が非常にいい。
これは脚本家も書きやすい作業だったんじゃないかと思います。

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そして主演のふたりの演技が素晴らしい。
もう、成瀬巳喜男の作品の二枚目は森雅之で統一していただきたい。
男小悪魔とついつい反発しながらも惹き込まれてしまうのは森雅之とレスリー・チャンだけです、私の中では。

高峰秀子の演技も素晴らしい。
4歳5歳の頃から一族郎党を養うために学業もできず、女優一筋でやって来た彼女の生きてきた情念のすべてが出ているように思われます。
浮雲がたくさんの映画賞を受賞した時に、小津安二郎は「デコおめでとう。このシャシンは俺には撮れないね」と言った内容の祝電を打っているそうですが、まさしくその通りだと思います。

反発し合いながらも離れられない富岡とゆき子を演じる主演ふたりの演技がどれだけ素晴らしいかは実際にご覧いただいた方が早いので説明を省きますが、森雅之の尋常じゃない色気だけは、あれはいったいどうすればあんな風にできるんでしょう。

また、もうひとつの見所は真珠の珠のような美しさを放つ岡田茉莉子の美貌でしょう。
熱海の温泉街でバーかなにかをやっている加東大介(やはり成瀬組の常連です)の歳の離れた妻、おせいと言う設定なんですが、富岡が温泉に浸かりに行ったらちゃっかりついて行っちゃうんです。
モテるんです、富岡ってやたらと。

湯煙の中にぼうっとかすむように現れるおせいはストレートな視線で富岡を見つめ(小津作品のローポジ撮影だと、この方のお顔ってちょっとアンシンメトリーで見る者に不安を与えます)、今のご亭主と別れて東京に行ってダンサーになりたいとか、富岡に身の上話をしちゃうんです。
そんなこと言っちゃったら富岡にいいようにされちゃうじゃないのー!って思いながら見ている時にはもう遅い。
ふたりは眼と眼だけで恋に落ちる。

この文学的な映像表現が素晴らしいんです。
成瀬巳喜男監督って本当に淡泊な演出をなさる方と聞きましたが、こんなに濃厚な演出をされたのは浮雲が最初で最後かと思います。

富岡に関わることとなった女性は、作品中だけでも4人にて、そのうち3人が命を落としています。
それでもあの色気は枯れることがないのでこの作品は映画史上に名作として君臨し続けているのでしょう。
是非ご覧くださいませ。

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