2018年8月5日

ヤルセナキオの精一杯な観客サービス

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淡泊な成瀬巳喜男監督が唯一笑いを取りに行った「めし」

前回ご紹介した成瀬巳喜男監督の「めし」では、撮影所のスタッフたちに「ヤルセナキオ」とまで呼ばれた淡泊な性格の成瀬が、唯一観客サービスに勤めたシーンがあります(ひょっとすると原作にあったのかも知れませんが)。
ここが分かっているのと知らないで見るのでは大違いなので、今回はそのシーンをご説明させていただきます。

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「めし」がクランクアップする前に日大ギャング事件と言う少年犯罪がありました。
少年法の観点から匿名報道をするべきだと言うメディアの意見もありますが、もう名前はバレバレなので、分かりやすいように出しますが、日大の運転手として勤務していた山際啓之(19歳)と、その恋人で、たしか日大教授の娘、藤本佐文<18歳}が共謀して日大の給料運搬車を襲撃して、現金を強奪したのがアプレゲール犯罪(戦後派)とも呼ばれる日大ギャング事件です。

山際のアメリカ人志向は相当強くて、当時委の報道によると腕に「ヂヨーヂ」との刺青があったりとか(お間抜け)、「シカゴ」を「チカーゴ」と発音してみたりなんですが、極めつけは3日後の逮捕時に言った「オー!ミステイク」という発言です。
二人はたった3日間でダブルベッドや当時のお金で30万円分のお洋服をあつらえたりしています。
そんな豪勢な逃亡生活と逮捕時の悪びれもしない写真から「オー!ミステイク」はたちまち当時の流行語になりました。

「オー!ミステイク」は当時の大流行語でした

「めし」の中で、東京から家出をして上原謙と原節子の家に居候する跳ねっ返りの姪っ子、島崎雪子と、ご近所さんのちょっとイカレポンチな青年、大泉洸がデートをするシーンがあるんですが、このシーンで大泉洸に「オー!ミステイク」を言わせているんです。

このくだりは当時の観客に大いにウケたことでしょう。
成瀬巳喜男という監督は、こんな通俗的な笑いを取ることをむしろ嫌っていると思っていたから驚きでした。
そして、他の作品にこのような「さあ、笑ってください」と言わんばかりのセリフを見たことがありません。

主演の原節子としても新境地を開くべくこの作品に出演してみたのでしょうが、どうにも「貧乏がつらい」と甘ったれたことを言っている専業主婦にしか見えず、あまり得をした役とも思えません。
むしろ出演しない方が良かったんじゃないかと思わせる出来でした。

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