2018年7月31日

もしも、あのゴシップが真実だったら

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昭和26年公開の林芙美子原作、成瀬巳喜男監督の「めし」に原節子は主演します。
これは小津安二郎の「麦秋」を撮り終えたあとの作品です。
麦秋での颯爽としたビジネスガール姿と違い、上原謙(加山雄三のお父上で、大変な美男俳優です)の妻役を演じるのが原節子です。

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大恋愛の末に結婚したというのに、夫婦仲はすっかり冷め切って、毎日を怠惰に暮らすのが原節子の役柄です。
いや、これは原作が良くないです。
大体が成瀬巳喜男と言う監督はなんでも原作を尊重し自分を出さない人なんです。

林芙美子に専業主婦を描く資質がなかっただけなのではないでしょうか。
この人は強い女を書く時の筆は非常に激しく魅力的ですが、当時から言われていた「三食昼寝付き」の専業主婦の日常になんかからっきし関心がなかったかのように思います。

だから、全体的に少女小説のような大甘な仕上がりとなっているんですけれど、この作品の撮影に入る際に当時の芸能記者たちは大騒ぎでした。
「原節子が成瀬監督のめしに出るから、最近めっきり台所仕事に夢中になっているらしい。これはもしや小津監督との結婚を視野に入れているのでは?」

両者ともに即座に否定をして、双方独身のまま生涯を終えたわけですが、もしも、もしもですよ、そのゴシップが真実のものとなっていたらと、時々考えることがあります。
実際にどの程度だったのかは分かりませんが、ふたりが仲良しだったのは間違いないと思うんです。
ただの仲良しさんではなくって、原節子は小津安二郎を大変尊敬していて、「小津先生の作品に出るのなら、あたし出演料は半分でもいいの」とまで言っています。

原節子と言う人は女優時代の言動を顧みても自己主張の少ない、引っ込み思案な性格だったと推測されるのですが、そこまで激しいことを言ったのは小津作品についてだけです。
もちろん、彼女は当時の日本映画界のトップ女優のひとりであり、ギャラもトップクラスだったことを自覚しての発言でしょう。

小津もまた美貌しか評価されたことのない原節子を「大変勘のいい女優だ」と太鼓判を押しています。

けどきっと、原節子が家庭に入るタイプの女性ではなかったのかも知れません。
原節子だって何十年もスタアと呼ばれ続けた女優です。
内心はおとなしいようにしていても、自分の女優引退を自分で決めてそれからは隠遁生活に入る。
これはとても真摯で男勝りな人生観だと思うんです。

ふたりは情愛では結ばれませんでしたが、仕事として非常に素晴らしい作品を後世に残しました。
下衆の勘ぐりはここまでと致しましょう。

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